暗屯子の部屋

ミカンと温泉の街に潜み、IgA腎症と戦いながら研究と釣りに明け暮れている、ヒゲとメガネとは私のことです。

昔話

4月13日は地元の旧友の誕生日だったことを思い出した。
その旧友は手先が器用で気配りができ、芯が強く自分で決めたことは着実に実行する男だった。
おまけにお洒落で女性にもてるという、自分にはないものをたくさん持っている男だった。
その男は自分の夢を叶える準備をするといって仕事に励んでいた。
大学生の特権でプラプラしていた自分には彼が輝いて見えた。
彼を見ていると、何も目標がない自分が恥ずかしいとも思ったし、夢中になれる何かを見つけなければならないとも思った。
幸い大学で研究に出会い、自分にもようやく夢中になれるものを見つけることができた。
しかし、研究に没頭するあまりいつしか彼と連絡しなくなっていた。
 
あれから20年近くの時が流れた。
彼の弟の話では今は東京で働いているらしい。
久しぶりに話がしてみたいが、あれから自分もいろいろと変わってしまった。
正直なところ電話をする勇気がない。
 
卑怯ではあるが、インターネットで彼の名前を検索してみた。
一番最初の検索結果は紛れもなく彼のものだった。
驚いたことに東京のある会社の代表取締役社長になっている。
おそらく自分で会社を作ったのだろう。
彼が頑張ってきたことが少しでも分かって嬉しくなった。
 
最近、自分が研究や仕事に励んでいるうちにいろいろなものを失くしてきたことに気付かされることが多い。
自分は不器用なうえに狭量であるため、たくさんのものを一度に手にすることができなかったようだ。
研究や仕事に励んだこと自体には後悔はしない。
ただ、これからは取りこぼしを少しでも減らしていきたいと思う。