釣り初め(後編)
釣った小アジを生かしたまま、佐田岬の先端近くの三崎港へ移動する。
今回の泳がせ釣りの標的はマトウダイだ。
辻君が作ってくれた仕掛けに生きた小アジをつけて海に投入する。
後はマトウダイが小アジを食べるのを待つだけだ。
小アジを補充するため三崎港でもサビキ釣りを始める。
最初は釣れなかったが、そのうち辻君が小アジを釣り上げ始めた。
なぜか植村君だけ小アジが釣れなかった。
しばらくすると彼が変わったものを釣った。
ナマコだ。
おそらくひっかけたのだろうが、ナマコが釣れたのを見るのは初めてだ。
なかなかアタリが来ないので車の中で仮眠をとる。
目が覚めてふと見ると自分の竿が大きくしなっている。
竿を上げてみると明らかに何かがついている。
それに気づいた辻君が「何か魚がついているんじゃないですか」と見にきてくれた。
仕掛けを巻き上げいくと、彼が「マトウダイだ!」と叫んだ。
このポイントは海草が多いので自分にはさっぱりわからない。
植村君が玉網を持ってきて、3人がかりで海草を避けつつ、ついに釣り上げた!
25cmくらいの小型だが、初めてお目にかかるマトウダイだ。
顔が馬に似ているので「馬頭鯛(まとうだい)」と名づけられた。
また、体に大きな円形の黒色斑があるので「的鯛(まとだい)」とも呼ばれている。
どちらにしても鯛にはあまり見えない。
口がにょーんと伸びる。
これで小魚を飲み込むのだ。
泳がせ釣りではリールのドラグを緩めるので、強烈なアタリがきた場合「ジー」という音とともにリールから糸が出ていく。
このアタリが辻君と自分の竿にもきたが、仕掛けを上げても魚はいない。
泳がせ釣りでは、小魚を完全に飲み込ませるまでひたすら待つ方がいいのかもしれない。
ただひたすら待つのだ。
よく見ると、植村君の竿にアタリが来ているような気がする。
彼が仕掛けを巻き上げてみても何もついていないようだ。
念のため最後まで巻き上げてみると、何とマトウダイがついていた。
感触がわからなかっただけか。
こちらも25cmくらいだ。
2匹のマトウダイを並べてみた。
お腹がぽっこり膨らんでいる。
この後マトウダイをさばいたのだが、小アジがそのまま胃袋に入っていた。
小アジは10cm程度なので、このサイズのマトウダイにしては結構大きなエサを食べている。
ということは、一度エサを食べたマトウダイはしばらくエサを食べないのではないだろうか?
この後大きなアタリもなく、15時過ぎに納竿した。
とここで事件が起きる。
植村君が海で手を洗おうとしたところ、足を滑らせて海に落っこちてしまったのだ。
あらあらまあまあ。
今年の釣り初めはまさに植村君のためにあるようなものだった。
- 玉網でメッキアジを捕獲する。
- ナマコを釣る。
- マトウダイを釣る。
- 海に落ちる。
この後、彼は風邪をひいて寝込むことになる。