暗屯子の部屋

ミカンと温泉の街に潜み、IgA腎症と戦いながら研究と釣りに明け暮れている、ヒゲとメガネとは私のことです。

シーバスへの道(邂逅編)

実は以前にシーバスを釣ったことがある。
場所は、明太子と豚骨ラーメンの街のとある河口だ。
昔の研究室に所属していた高橋広和君に教えてもらった場所だ。
彼に教えてもらってバスロッドとミノーを買った後に、その場所を紹介してくれた。
「俺、これから人を連れてくるので適当に投げていてください」と言い残し、高橋君は車でどこかに行ってしまった。
ルアー釣りなんてやったことないのに、と思いながら適当に投げてみるといきなり50cmくらいのシーバスが釣れた。
初心者でもシーバスが釣れる、まさに奇跡の河口だった。
 
ただその河口の水はお世辞にも綺麗とは言えなかった。
その後で綺麗な海でルアー釣りをしたが、所詮は初心者、何も釣れない。
自分にはルアー釣りはできないと思い、すぐに諦めてしまった。
 
それから7年の月日が流れた。
 
釣り部のエース・辻君と出会い、ルアー釣りについていろいろ教えてもらったことで、またシーバスへの意欲が湧いてきた。
そして、彼が中島の綺麗な海でシーバスを釣り上げるのを目の当たりにする。
 
もうシーバスへの気持ちを抑えることができない。
時間がある限り海に行ってルアーを投げる練習をしてきた。
しかし、今週から授業と実験で本格的に忙しくなる。
もう今日しかない。
ということで、早朝にルアー釣りに行ってきた。
 
朝4時30分に起床していつもの伊予港周辺に向かう。
途中、釣具店でトリプルフックつきのメタルジグを購入した。
せめてアタリは逃したくない。
5時すぎにいつもの場所に到着し、メタルジグを投げ始める。
しかし、土曜日と日曜日にあったようなアタリはほとんどなかった。
 
6時40分を過ぎ、数回投げたら帰ろうかと考え始めた。
メタルジグを右側に投げてみるとついにアタリが来た!
時折リールのドラグが音を立てて糸を出すが、比較的簡単に寄せることができる。
「そんなに大きくないな」と思った瞬間、右に投げたはずの糸が左にあることに気づく。
そしていきなりシーバスロッドが曲がる!
左手で必死にロッドを支えていると、ついにシーバスが姿を現した。
 
この時、昨日、隣の人がゆっくり時間をかけてハマチを釣り上げたことを思い出した。
焦りは禁物だ。
もしここで焦ったなら、土曜日の事件が再現されるだけだ。
逸る気持ちを抑え、時間をかけてシーバスを足元に寄せていく。
 
今日は海が穏やかだ。
踝が浸かるくらいまで海に入り、手元に置いておいた玉網を取る。
そして…!

ついにシーバスを釣り上げた。
実感はまったくない。
ただ玉網が重いことだけが判る。
 
玉網を持ってテトラポッドを上る。
平らなところにシーバスを置いた。

70cmあった。
 
大学へ向かう車中でいろいろ考えた。
このシーバスは自分一人で釣ったものではない。
高橋君や辻君はもちろん、シーバス釣りのコツを教え続けてくれた「大輔」の先輩、釣具店の栗原さん、そして釣り場のおじさん達。
いろいろな人たちに支えられてシーバスを釣ることができた。
本当にありがとうございました。
 
自分の左手にはまだシーバスの感触が残っている。
またこの感触を味わいたい。
時間ができたらまた海に行こう。
今度は青物も釣りたいな。