卒業(後編)
23時過ぎになり、投げ釣りのアタリがなくなった。
このまま体力を消耗するよりも朝マズメに備えて休憩したい。
ということで車の中で一眠りすることに。
車のシートを倒し、腰の下に衣類をまとめてクッションにして(腰痛持ちです)毛布に包まる。
ウトウトし始めた頃、辻君から電話がかかってきた。
「70cmくらいのシーバス(スズキ)が釣れました!」
「は?」
寝ている場合ではない。
急いで波止に戻ってみると。
本当だった。
釣り部創設以来の大物だ。
海を見ると今までいなかったはずのベイト(小魚)がいる。
急いで車に戻ってシーバスロッドを用意し、シーバス釣りを始める。
しばらくすると辻君のルアーにシーバスが再びヒットした。
玉網でシーバスを取り込むが重過ぎてなかなか上がってこない。
そうこうしているうちに玉網の柄が折れてしまった。
何とか釣り上げたシーバスはさっきのものよりも明らかに大きい。
釣り部記録をあっさりと更新する89cmのシーバスだ。
「大輔」の先輩が釣り上げたシーバスを見て以来、自分が釣りたい魚の上位にシーバスがランクインしている。
それが目の前で釣り上げられた今、溢れる「釣りたい欲」を抑えることができない。
しかし、悲しいかな自分はまったくの初心者。
アタリがあるものの釣り上げることができない。
そんな時ついに自分のルアーにヒットした!
メバルかよっ!
いや、メバルもうれしいんですけどね。
結局、泣く泣くシーバスをあきらめて休憩することにした。
2時間ほど寝て、4時ごろから再び投げ釣りを始める。
早速アタリがきた。
26cmのマコガレイだ。
やったぜ!
7時過ぎにはアタリがピタリと止んだ。
釣れる気がまったくしなくなったので8時過ぎに納竿した。
車の側の波止で釣った魚を捌く。
その最中、漁船にミミズクが止まっているのを発見した。
こんな明るい時期に珍しい。
漁師さんにお願いして漁船に乗せてもらった。
慎重にミミズクに近づく。
ミミズクはまったく動かない。
それもそのはず、ミミズクは作り物だった。
鳥除けのために置いたそうだ。
フェリーの出発時刻まで間、中島の海を眺めていた。
辻君は今までシーバスを釣ったことがなかった。
最後の釣りが最高の釣果で終わって良かった。
釣りを続けているなら、また一緒に釣りをすることもあるだろう。
その日まで腕を磨いておこう。
そしていつか必ずシーバスを釣り上げてやる。