暗屯子の部屋

ミカンと温泉の街に潜み、IgA腎症と戦いながら研究と釣りに明け暮れている、ヒゲとメガネとは私のことです。

玉網王に捧げる釣り(中編)

釣りをしている間に日が傾いてきた。
中島には街灯が少なく夜間に移動しづらいので、場所を決めて釣りをすることにした。
 
その場所では小さいながらも植村君がメバルを連発していた。

自分の投げ釣りでも32cmのクロソイが釣れた。

なかなかの釣果に期待が高まる。
 
20時頃に宮崎君を乗せたフェリーが到着した。
彼を車で迎えに行き、ついでに放置していた投げ竿を見てみると、自分と植村君の竿にアナゴが掛かっている。
植村君のアナゴは今まで見たことがない大きさだった。

かなり太く、長さも60cmを超えていた。
すでに辺りは真っ暗である。
アナゴが釣れ始めたということは、カレイタイムが終わったということだろう。
これからはルアー釣り一本に絞ることになる。
 
深夜に備えて夕食をとることにした。
街灯の下であらかじめ買っておいたお弁当を食べる。

お弁当は冷めていたが、釣りをしながらの食事はとても楽しい。
 
食事を済ませた後、釣り場に戻ってメバリングを始めた。
宮崎君はライトロッドを持っていないので、清原君のタックルを借りる。
その一投目でいきなりメバルが釣れた。

植村君も順調に釣っている。
清原君はシーバスを狙っていたが、そのアタリがなかなかない。
それでも34cmのクロソイを釣り上げる。

メバルはなかなか好調だが肝心のシーバスが釣れない。
時折シーバスが見えるのだが、ほんの少しアタリがあるだけでまったく釣れない。
昨年あったシーバスのライズが今年はまったくないのだ。
そのうちシーバスの姿も消えてしまった。
すでに時計は午前1時を回っている。
疲れ果てた植村君と清原君は車に戻り仮眠し始めた。
 
それから1時間後。
自分も仮眠を取ろうと帰ろうとしたその時、宮崎君が「シーバスのアタリがありました」と言った。
せっかくだからとルアーを投げてみると強いアタリが来た!
リールのドラグからジージーと音がして糸が出て行く。
シーバスに間違いない!
しばらくの格闘の後、海面に60cmくらいのシーバスが浮上してきた。
ところがここで重大な問題が発生する。
あまりの干潮のために海面が下がってしまい、波止からでは玉網が少ししか届かなくなっていたのだ。
宮崎君が頑張って玉網で掬おうとするが、玉網の柄が折れているために網の部分に力が入らない。
 
意を決して玉網でシーバスを掬った瞬間、シーバスがフックから外れてしまった。
 
何ということだ。
念願のシーバスを目前で逃がしてしまった。
もちろんこれは宮崎君が悪いのではない。
折れた玉網を使い続けている自分に全ての責任がある。
実は、この玉網の柄はちょうど1年前、今まさに自分が立っている場所で折れた(というよりも自分が折った)。
1年間は全く問題なく玉網を使っていたが、今日この時にこの有様だ。
因縁としか言いようがない。
 
果たしてシーバスを釣ることができるのか?
後編に続きます。