はじまりはいつも雨(後編)
不安を抱えながら釣りを続ける。
夕食後に当真先生が20cmくらいのクロソイを釣り上げる。
ひょっとしたら昨年の様になると期待したのだが、残念なことにこの後はメバルしか釣れなくなった。
これまでに既に20匹以上釣っているのでさすがに飽きてくる。
宮崎君は切れてしまったラインで遊んでいる。
どうやら手釣りでメバルを釣り上げたいようだ。
何を馬鹿なと思ったが本当に釣れた。
合計で3匹釣ったがそのうち手釣りにも飽きて止めてしまった。
メバルに飽きてしまったので各々が青虫を餌に投げ釣りを始める。
夜中の投げ釣りではアナゴしか釣れないだろうと思っていたが、本当にアナゴばかり釣れた。
まずは小川君が良型のアナゴを釣り上げる。
この後、宮崎君が大物を釣った。
長さが70cmくらいあり、なおかつ気持ち悪いくらい太いアナゴだった。
そう言えば昨年も植村君が同じ様なアナゴを釣っていた。
釣り部は何かとアナゴに縁があるなあ。
日が変わって場所を移動したが釣れるのは相変わらずメバル。
アジやシーバスの姿も見えない。
そして遂に夜が明けてしまった。
もうメバルさえも釣れない。
帰りのフェリーに乗る前に朝食を取った。
お茶でインスタントラーメンを作ったのだが、お茶の量が多すぎたためにやや吐き気を催す味になってしまった。
それはさておき、これで釣りが終わった訳ではない。
最後の望みを託し、投げ釣りをしたまま朝食を取る。
食後に仕掛けを見てみると。
仕掛けに魚はなく海草が絡んでいただけだった。
これが宮崎君が学生時代の最後に釣ったものである。
中島での釣りは例年の様に派手な釣果ではなかった。
しかし、メバルは息つく暇もないほど釣れたので良しとしよう。
宮崎君との釣りはこれが最後になるが、それはあくまで学生としてである。
彼が社会人になっても、そして自分達が老いさらばえても釣りはできる。
いつかまた彼と釣りをすると誓って中島を後にした。