暗屯子の部屋

ミカンと温泉の街に潜み、IgA腎症と戦いながら研究と釣りに明け暮れている、ヒゲとメガネとは私のことです。

聖断

今日はお盆にして終戦記念日である。
実家のお墓の方向を向いてお祈りする。
それ以外は来週の学会発表の準備や、読書をするなどして静かに過ごした。
 
今日は半藤一利氏の「聖断 昭和天皇鈴木貫太郎」について思ったことを書き留めておきたい。

鈴木貫太郎終戦時の内閣総理大臣である。
戦争を終わらせ日本を壊滅から救った人物ともいえる。
ただし彼は本来政治家ではなかった。
彼は日本帝国海軍の大将まで登り詰めた生粋の軍人である。
海軍では「軍人は政治に関与せざるべし」を美徳としており、彼もまたそのように考えていた。
日清・日露戦争で奮闘した猛将でありながら米英との戦争には終始反対していた。
そんな彼に対し、昭和天皇は内閣の組閣を命じる。
その時既に77歳。
彼は何度も辞退を願い出たが、
「その心境は、よくわかる。しかし、この重大なときに当たって、もうほかに人はいない。…ほかに人はいない。頼むから、どうか、曲げて承知してもらいたい」
天皇が述べたという。
忠臣の鈴木貫太郎は最後のご奉公と考え、終戦に向けて邁進することになる。
 
戦争を止めるといってもそう簡単にはできない。
こっちが止めたいと思っても、相手がそう思ってくれるかは分からない。
ましてや一対一の喧嘩ではないので、身内が「戦争を止めるな」と言ってきたら、敵と身内の板挟みになることは想像に難くない。
しかも日本が戦争に負けるのがほぼ決定している時なのだ。
普通の人間ならその立場になることから逃げ出すだろう。
 
とにもかくにも鈴木貫太郎は戦争を終結させた。
そんな彼の生涯を、昭和天皇との関係を交えつつ、特に戦争終結時について詳しく書き記したのがこの本である。
 
著者の主観が少ないうえ、文章が読みやすい良本である。
少なくとも自分はこの本を読んで良かったと思っている。