暗屯子の部屋

ミカンと温泉の街に潜み、IgA腎症と戦いながら研究と釣りに明け暮れている、ヒゲとメガネとは私のことです。

今年一年を振り返って(仕事編)

2019年も残り2日。

この一年を振り返ってみたい。

悩むことが多かった研究

今年一年の研究では悩むことが多かった。

研究費や研究設備などいろいろなことで悩んだが、その中で一番悩んだのが新しい研究技術の習得だ。

今の自分の研究テーマのうち、自分の実験技術でできることはあらかたやり尽くしてしまっている。

より研究テーマを発展させるためには新しい実験技術を身につけなければいけないのだが、それがお金がかかったり難易度が高かったりするのでなかなか習得できない。

今年一年取り組んでいるのが組織標本の作製だ。

古典的な動物の組織標本の作製(パラフィンの流れは以下の通りだ。

  1. 動物から組織を採取する。
  2. 適当な固定液で組織を固定する(組織の腐敗を防ぎ、形状を維持するため)。
  3. 組織の水分を除いてパラフィンに浸透させる。
  4. 組織をパラフィンの塊に埋め込み、パラフィンブロックを作る。
  5. ミクロトームでパラフィンブロックを薄切りにする。
  6. スライドグラスに張り付けて、パラフィンを取り除いて染色する。
  7. スライドグラスを顕微鏡で観察する。

最新の方法を除き、動物の組織は薄切り(0.004~0.06mmの厚さ!)にしてから顕微鏡で観察するという方法を取っている。

薄切りにするのが難しいので、パラフィンなどに埋め込んで固め、組織をパラフィンもろとも切ることで薄切りを可能にしているのだ。

組織学の専門家なら当たり前の技術であるが、自分は素人同然なので全てを一からやらなければいけない。

上記の7つの項目の全てに工夫が必要なのだが、論文や本に書いていないことも多く、トライアンドエラーの日々が続いた。

最終的に大学時代の先輩や、他大学の先生、医学部で働いている元教え子に相談したことでようやく形になりつつある。

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空腸の顕微鏡写真

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食道の顕微鏡写真

今の技術は100点満点で60点くらいだ。

今年の初めにはほぼ0点だったのでよく頑張ったと思うが、論文に掲載できるようになるまではもう少し時間がかかりそうだ。

この他にも身につけておきたい技術が山ほどある。

自分の技術が獲得するスピードよりも、科学技術の進歩の方が圧倒的に早い。

中国など研究費が潤沢にある外国の研究者ならお金で解決することができるのだろうが・・・。

自分の研究技術の拙さ、貧弱な研究費と研究設備、授業や運営などの研究以外の仕事の増加、一緒に研究を行う学生の能力の変化、外国の研究者の研究の発展による自分の研究の陳腐化など悩むことばかりだった。

論文はぼちぼち

何とか2本の論文を国際学術雑誌にアクセプトさせることができた。

しかし、今使える実験技術だけでは論文が採用されづらくなってきた。

自分の研究のネタも尽きかけている。

来年は論文の数にこだわるのではなく、これからの論文のための土台作りを進めたい。

授業や大学の運営について

こちらはぼちぼち。

いつまで経ってもあまり意味のない会議に慣れない。

授業の方はそろそろ内容を見直した方が良さそうだ。

自分の体について

2019年、44歳になって自分の老化が進んでいることを自覚することが増えた。

まずは老眼。

細かいものを見る時には眼鏡を外さなければいけなくなってしまった。

また、夕方になると目が疲れているのが分かるようになった。

眼鏡を新調すれば良いだけかもしれないが・・・。

また空間認識能力が低下したため、物にぶつかることが増えた。

そして物忘れも増えた。

一方で持病の方は特に問題なし。

そろそろ本格的に身体を労わってやらなければいけないようだ。

 

全体的に見て、今年は研究に頑張ったつもりなのだが、実際にはあまり進んでいない印象だ。

身体の限界が迫っている今、焦っても仕方ない(と必死で自分に言い聞かせている)。

とにかく自分なりのやり方を見つけるしかない・・・と思う。